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博士の愛した数式

博士の愛した数式
小川 洋子 / 新潮社
スコア選択: ★★★★




文庫本が発売されていたので,購入して読みました.
2年くらい前になるんでしょうか,本屋大賞を受賞したのは.
かなり気になっていたのですが,売れている本はいずれ文庫化されるので,
いつもそうなってから読むのが常になってしまっています.
この本もご多分に漏れず,文庫化されるのを待っていました.
昨年の秋頃でしたか,文庫化され書店に並んでいたので購入した次第です.
単行本もずっと平積み状態でしたし,きっと良い本なんだろうなと期待していました.

映画化され今度1月21日から全国東宝系で公開されるんですね.
この宣伝を「ALWAYS三丁目の夕日」の前にやっていて,
寺尾聡と深津絵里の構図がとても良かったので,気になっているのですが,
公開されたら見に行こうと今から嫁さんと話をしています.
最近,映画を見る時東宝系の映画を見ることが多いのですが,
こういうコマーシャルで見に行きたいなと思う映画は大体良い感じの映画が
多いなと思うんですが,どうでしょう?
楽しみにしています.



さて,ストーリーは80分しか記憶が続かない天才数学者と家政婦,
その10歳の息子の三人が織りなすストーリーになっています.
淡々と話が進む中にも明るい部分,影の部分というのが
適度にちりばめられた感じになっています.

所々に出てくる阪神タイガースネタは,作者が兵庫県に住んでいるからでしょうか.
プロ野球ファン,阪神タイガースファンなら誰もが知っている
あの原オリックス監督の中村監督率いた阪神タイガースが野村ヤクルトと首位決戦をして,
2位になった年のことがネタに使われているのです.
この使われ方は,野球ファンにとっても癖のない良い感じの使われ方をしており
とてもほほえましく感じました.
この阪神タイガース,その中の江夏の存在がとてもこの小説に重厚さを
生んでいるのではないでしょうか.

小説というのは,人間の嘘っぽさがあるとどうしても興ざめしてしまいます.
それはフィクションというもの共通のものなんでしょうが.
この小説を書くにあたり作者はとても綿密に取材をしたのだろうなと
いうことが良く伝わってきます.
難しい数式がたくさん出てくるのですが,理系人間ではなくても
数学の中に存在する数に関してのストーリーや秘められた法則,
そして現象というのがとてもいとおしく感じられるのではないでしょうか.

僕は理系人間なのですが,この小説に書かれている数字への愛着,数式への情熱
そういったものは自然科学の基本的な部分なのではないかと思うのです.
こういった本を,文系の純文学作家の方が余すことなく小説に盛り込んだのは
とてもすごいことではないかと感じました.
なぜなら,数学や理系の学問というのは実際の生活の中にどれだけ役に立つのか
解らない部分が多くあると思います.
方程式が解けたからといって,それが何の役に立つんだろうか?
そんな疑問を学生時代に思ったことがありました.
しかし,理系に進み色々試行錯誤する中で,ルールを守ることによりそこからしか
新しい発見というのは見つからないんだということです.
そういう意味では知識を得ることはとても重要なのではないでしょうか.

ただ,知識を得るだけではどうしようもないわけで,それがアウトプットされて初めて
意味があるわけですよね.
これは,様々な経験を通すことによりある時とつぜんつながってくる感じがあるわけで,
そこで深みというものが増していくような気がします.
この小説に表されている部分.とても理系チックなところがしっかりと描かれており
とても良い印象でした.
by ryuma75 | 2006-01-02 20:58 | Book & Magazine

世界は身近なところでも,大きく広く,そして深くてとても面白い.色々興味を持ったものを眺めて,読んで,聞いて,遊んで,動いて,味わって.そして楽しんでます.


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