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新潮文庫の100冊から・・・

 毎年,夏になると文庫を出版しているどの出版社もフェアを行って,どの書店も文庫のコーナーが充実します.嫁さんは,講談社文庫の「夏イチ」の携帯ストラップが大好きみたいです.僕はというと,新潮文庫の「Yonda?」が大好きで,毎年グッズほしさに2冊ずつ購入しています.

 今年購入した2冊の内の1冊がこれです.

李陵・山月記 (新潮文庫)

中島 敦 / 新潮社

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 昔,高校の教科書に確か山月記が出ていたと思います.まず,現代文の教科書なのに漢文と古文の要素が混じっているこの文章に驚きました.さらに,この作品が丁度戦中の作品であることに驚き,また作者が33歳という若さで没している事に驚きました.格調高い日本語というのは,こういう文章なのかなぁと感じた記憶があります.

 そんな作品を,中島敦よりも年取った自分が再び読んでみると,どんな気持ちになるかという興味を持って,この本を今年の1冊にしたのです.
 山月記を読んで,とても心にグッと来るものがありました.「臆病な自尊心」,「尊大な羞恥心」という言葉がとても身に染みます.この半世紀以上昔の短編が,今も読み継がれ出版され続ける理由がわかります.人間の心の奥底にある虚栄心のようなものが,見透かされて題材にされているわけで,それをまとめ上げている作品の力は絶大です.

 高校時代,この短編の持っている大きさを理解できるわけはなく,しかしながらその大きさの影響を受けていたからこそもう一度読んでみようと思ったわけで,国語の授業というのは良い作品と出会っていたのだと,今更ながら思います.

 夏の休日,暑い中わざわざ出かける出もなく,エアコンの効いた書斎で音楽をかけながら,中島敦のような作品を読書するのは,結構な心の贅沢だと思いました.
by ryuma75 | 2009-08-16 22:06 | Book & Magazine

世界は身近なところでも,大きく広く,そして深くてとても面白い.色々興味を持ったものを眺めて,読んで,聞いて,遊んで,動いて,味わって.そして楽しんでます.


by ryuma75
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